1年目のクリスマス 「あのね、ミネア姉さま、ちょっと相談があるんだけど…」 「あら、なあに?アリーナ」 「あの…あのね、マフラーの編み方、教えてほしいの。あの、そろそろ寒くなるし、マフラーほしいなって思って」 ミネアは、あら、と呟いてアリーナを見た。 珍しく歯切れ悪く言葉を紡ぎ、もじもじしながら、少し恥ずかしそうにしているアリーナ。 ぴんと来ない方がおかしい。 「いいわよ。今日は時間あるし、さっそく毛糸屋さんに行きましょうか」 「えっ、べ別に編み方だけ教えてくれたら…」 「あら、せっかくなんだし、似合う色を選ばなきゃ。…どうせなら、気に入ってもらえるもの、作りたいでしょ?」 ミネアの言葉に、アリーナはその場に固まった。 しばらく経って、硬直がとけたアリーナは、真っ赤になりながらぶんぶん首を縦に振って肯定した。 * * * 「あ、そうだ、ミネアさん」 「はい?」 「男が、編み物とかって…おかしいと思いますか?」 夕飯の片づけ中、クリフトがやや遠慮がちに話しかけてきた。 「え?いいえ、全然おかしくないと思うわ。クリフト、編み物できるの?」 「ええ、お城にいた頃結構編んでたんです…。それで、その…アリーナ様にマフラーを…」 「プレゼント?」 「あ、はい、そう思ってるんです。でも、『男のくせに』って言われそうで…迷ってて」 そう言ってクリフトは、ミネアから目をそらし、頭をかいた。 そんなクリフトを、ミネアは温かみを感じさせる眼差しでクリフトを見つめた。 そして、にっこりと微笑んで言った。 「とってもいいことだわ。アリーナは絶対喜ぶと思うわ」 ミネアの賛同が迷うクリフトを後押しした。決心したクリフトが、うん、と頷く。 「ミネアさんがそう言ってくれるなら…編んでみます。ありがとうございます」 「ええ、頑張って」 * * * こんなやりとりがあってから2か月経った今日は、クリスマス。 アリーナは生まれて初めて編んだ記念すべきマフラーを、丁寧に包んでリボンをかけた。 クリフトは今まで編んだなかでいちばん気持ちを込めたマフラーを、そっと袋に入れて口を可愛く結んだ。 宿屋の廊下で、お互いの姿を認め、それぞれプレゼントがあることに驚きつつ、その場でプレゼントを交換した。 紐とかれる2つの包み。 同時にお目見えとなった、2つのマフラー。 思いもがけないプレゼントに、同時に顔をあげて、思わず互いを見つめた。 その表情は、どっちもびっくり顔。 一瞬後、堪え切れずに爆発した2人の笑い声は、宿屋中に響き渡ったのだった。 ××× Merry Christmas ×××
|
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||