サイン




まもり姉ちゃんはデビルバッツただ1人のマネージャー。
主務は一応僕だけど、それもまもり姉ちゃんがやってるようなもの。
最近は実戦形式の練習が多く僕はアイシールド21になっていることがほとんどだったから、いつもだったら手伝ってる雑務もほぼ全てまもり姉ちゃんに任せきりな状態だった。
それでもどの仕事も完璧にやってしまうまもり姉ちゃんはすごい。


西部戦が近づいてくる中、デビルバッツの練習はとても激しい。
そして当然、指示を出すヒル魔さんの声や言葉もいつにも増して厳しかった。
僕たち選手にはもちろんだけど、マネージャーのまもり姉ちゃんへの指示にもそうだ。
まもり姉ちゃんはヒル魔さんに臆せず意見を言える貴重な人のひとりだ。
だから僕は、まもり姉ちゃんが何か命令されるたびにまたケンカが始まるんじゃないか、っていつも少し心配していた。





「もう時間がねェんだ、テメェちんたらしてんじゃねェぞ!
 3分休んで実戦だ。糞チビ!アイシールド呼んで来い!糞マネ!試合準備しとけよ!」

容赦ない怒号が僕やみんなやまもり姉ちゃんに飛ぶ。
自分が怒鳴られたことなんて気にしてられない。まもり姉ちゃん怒ってないよね?
いつになく大きな不安に襲われて、僕はびくびくしながら思わずヒル魔さんとまもり姉ちゃんを交互に見比べてしまった。


その時。
ヒル魔さんの指が体の陰で、小さく、でも鋭く動いた。


     ・・・サイン?


一瞬のあとやっと認識した僕の目のはしっこで、今度はまもり姉ちゃんの指が滑らかに宙を滑った。




























心臓が、飛び出すかと思った。








サインを見たヒル魔さんの顔。
すねたような照れたような、それらを一気に隠そうとして隠し切れなかったみたいなばつの悪そうな。


それは、まるで……まるで、甘えてる小さな子供を思わせたんだ。




「セナ、アイシールドくん呼んでくるんでしょ?急がないと間に合わないよ」

まもり姉ちゃんの声に我に返った。すでに部室を向いている後姿を、僕は慌てて追いかけた。
最後にちらりと見たヒル魔さんの顔は、もういつもの超強気に戻っていた。


あれは夢だったのかもと錯覚するほど短い時間。でも夢なんかじゃ絶対、ないって言い切れる。
体中の細胞がオドロキで未だにざわついてる。

でも多分、多分だけど。
いちばんオドロいてるのは、他でもないヒル魔さんなんじゃないかな…。



あのヒル魔さんにすらあんな顔をさせてしまうまもり姉ちゃんって、ホント、すごいや。












サインの内容は結局聞けなかった。
けれど。

しょうがないよねあの人、と困ったように呟くまもり姉ちゃんは微笑んでいて、
何故だかとても、幸せそうに見えたんだ。





***
セナ初語りです。まもりさんに恋心を持ってない感じに仕上げようとしましたが…ビミョウだー。

とりあえず書きたかったのはサイン。だってあれ、ヒル魔さんとまもりさんだけのツールですよ!
ずるいよ!反則だよ!
... 06/06/07



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