いつからだろう。気づけばクリフトの顔ばかり探している自分がいた。 「アリーナぁ、朝よ。起きて」 「ん〜〜〜〜〜………」 同室のデイに揺り起こされて、アリーナは渋々目を開けた。 光が目に入って少し痛い。 「先に下降りてるよ〜」 「はぁ〜い」 まだまだ重たいまぶたと戦いながら、ひらひらと手を振った。 はっきりとその想いを自覚したのは彼の病気。だけど多分もっと前から。 こんな気持ち一生ならないって、ちょっと前まで思ってたのに…。 自覚してしまったんだから仕方ない。いくらごまかしたって心のいちばん奥がしっかり認めてしまっているのだから。 だからと言って、何だというの? むくりと体を起こし、うーんと背伸びをする。 1日の始まり。 自分の立場はわきまえてるつもりだ。この手に世界中の人々の命を抱えているのだ。 そんな中で愛だの恋だの騒いで、仲間たちに浮かれてると思われたくなかった。 何より、そんなことで彼に嫌われるのはまっぴらごめんだった。 ふぁ〜あ、と大きなあくびを1つして、階段をトントンと下りる。 想いを伝える気はなかった。 かちゃりと食堂の扉を開ける。 そこには大好きな彼の姿。 だってほら。 いつだって彼は私のそばにいる。 「クリフトおはよっ」 「おはようございます、姫様」 いつも変わらぬ優しい笑顔。 あの日祖国を飛び出してから、彼はどれだけ守ってくれていたのだろう? あの日から今日までを、彼にどれだけ感謝すれば足りるだろう? そばにいてくれる。 これ以上何を望むというの? 「そろそろ起きてくる頃だろうと思って、ミルクティーをご用意しています。召し上がりますか?」 想いは伝えない。 想いを言葉にする暇があるなら、伝えきれるだけのありがとうの気持ちを伝えたい。 アリーナは心の底からの、最高の笑顔で応えた。
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