...........孔雀







「占いって当たるの?」

テーブルで銀のタロットを繰るミネアを、ベッドに寝っ転がって頬杖をつきながら眺めていたアリーナがそう尋ねた。

「そうね、時と場合によるわね」

タロットを丁寧に並べながら答える。
どういうこと?と首をかしげるアリーナにミネアはなおカードを並べながら言葉を続けた。

「占いは道しるべ。決して、未来を見通してるわけではないの。その人の未来への道しるべとなる光を捉えるもの」

まだわからない、という顔をしているアリーナに笑いかける。

「言い方を変えるとね、よく『その日のラッキーカラー』とかあるでしょう?あれはその人の未来を良い方向に導いてくれる道しるべのどこか一部に、その色が何らかの形で関わってくるってことなの」

ううううん〜とうなって、頭の中を整理するアリーナ。何となくではあるが、わかった気がした。
くりん、と体を転がして、ベッドの縁に腰掛ける。

「つまり、ラッキーカラーのものを持ち歩いても意味がないかもしれないってことね」

ご明察。とミネアが微笑んだ。

「そういうこと。ひょっとしたら選択肢の中でその色を選ぶってことかもしれないし、飲食するものなのかもしれないし、探さないといけないものかもしれない」
「うわ〜、難しい〜」
「そう、だから他に見えた光も集めれば信頼性が増すの。占いの腕は見える光の多さによる、とも言われているわ」
「そうなんだ。じゃあミネア姉さまは光がたくさん見えるのね」

素直なほめ言葉に、ありがとう、と笑顔で素直にお礼を言った。

「でも…そうね、占いを生業としている者から言わせてもらうと、軽い気持ちででもいいから心のどこかで信じてもらって、もし当たったときに『ああ、占いのおかげだったのかも』って思ってもらえるならこれ以上嬉しいことはないわ」
「そっかあ」

しばらく、足をぶらぶらさせる。
そして、うん、とひとつ頷いて、ぶらぶらさせていた足を止めてまっすぐにミネアを見て、にこりと笑った。

「あたし、ミネア姉さまの占いは特別信じることにするわ」

その笑顔につられて、ミネアも微笑みを返した。





こういうことを飾らずに言うアリーナを、本当に可愛いとミネアは思う。






と、その時。


とんとん


部屋の扉をノックする音が響き、

「姫様、いらっしゃいますか?」

続いて、聞き慣れた神官の声が聞こえた。

「あ、はーい」

かちゃっとアリーナが扉を開ける。すきまからクリフトが顔を見せた。

「これから武器屋に行くのですけど、ご一緒にどうかと思いまして」
「武器屋!?行く行くっ!」

ぱっと顔を輝かせるアリーナ。

「じゃあ下で待ってますね」
そう言うとクリフトはミネアに向かって、笑みを含めた会釈をして去っていった。


「じゃーごめんね、姉さま。ちょっと行ってくる」

そう言いながら簡単に準備を始める。
いってらっしゃい、と微笑むミネア。そして、

「そうそう、アリーナ。今日のあなたの運勢なのだけれど」

あたしのこと占ってたの?と扉に手をかけたままアリーナが目を丸くした。
微笑を浮かべてそれに応え、よく通る美しい声で続きの言葉を紡ぐ。

「今日は、とてもよい流れの1日よ。幸運を呼ぶ色は、山間の木々のように深い緑色」

細かいことまでわかるのねー、とただただ感心して聞いているアリーナ。

そこで少し言葉を切る。
そして、アリーナと目を合わせ…。



「――恋愛運、好調。楽しいデートになるといいわね」


にっこり微笑みかけた。




「デっ……!?」


ぱかっ、とアリーナの口が開く。まさかそうくるとは思わなかったのだろう。
そして瞬く間にアリーナの顔が朱に染まった。



「ミっ、ミネア姉さまのばかっっっ」



ひとこと言い放って勢いよく扉を開け閉めし。
まるで逃げるように足音が遠ざかっていった。





…そんなアリーナをあたたかい視線で見送って…。
ミネアはひとり楽しそうにうふふ、と顔をほころばせながら、再びタロットを繰り始めるのだった。


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*** あとがき ***

恋キューピットミネア姉さんの続き物第1弾…になるといいな。(こら)
ちなみにタイトルの意味はこの話ではまだ全然出てきてないですスミマセン(汗)

占いの概念は個人的に思っていることなので、実際占いをしてる人からしたらバカみたいなものかもしれないですが、どーか目をつぶってやってくださいませ。(どきどき)
っていうか、タロット占いでラッキーカラーもどうよっていうか(汗)
せめて水晶にすればよかった…。

とりあえず、ミネアが書きたかったんだけど…おしとやかな女性を書くのは難しいっつーことがよくわかりました。うあーん怖いよミネア。(泣)

アリーナのミネアに対する呼び方は結構迷いました。ちょっと前まで呼び捨てにしてたんですが、CDドラマでマーニャとミネアのことを「お姉さまたち、ホントにここに…(以下略)」みたいなセリフがあったのがずっと頭の中に残ってて、それを採用しました。いや、でも実際、実の姉のように慕っていると思うんですよー。一人っ子だしね。
(書いた日:2004/02/28)


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