...........ひとときの…







空が白々として、太陽が顔を見せ始める。
朝。正確に言うと朝方。

「おはよアリーナ、マーニャ」
「おはよー」
「んー、おはよ。もー眠いわぁ〜」
馬車から降りてきたデイに、さすがにやや疲れた表情で挨拶を返すアリーナとあくび交じりに答えるマーニャ。
野営中の夜の見張りをしていたのだ。
「お疲れ様。変わりなさそうね。ごはんどうする?」
「私、いらなーい。ちょこちょこ食べてたし」
「アタシもいいわぁ。とりあえず寝させてぇ」
「おっけい」
見張り組2人にデイはにこりと笑いかけた。

しばらくして他のメンバーも起き出してきた。皆、手早く朝の準備を始める。
食事はみんな一緒にはとらない。今日は次の目的地にできるだけ早く着くため、明るくなり魔物の気配が薄くなったらすぐに行動開始にしようと、昨日の会議で決まっていたからだ。
準備が早く終わった者から、めいめい乾パンなどを口に放り込む。
わずか10分ほどで全員の身支度は完了した。

「じゃあ今日はまず、馬車後方はライアン、左右はトルネコとブライで。ガンガンいくわよ」
「承知」
「任せてくださいよ」
「わかりましたですじゃ」
「クリフトとミネアは待機ね。いつでも戦えるようにしといて」
「了解しました」
「はい」
指名された3人が馬車に武具を取りにいく。待機組も馬車に入る。
「アリーナ、マーニャ、目的地に着くまでちょっと寝てたらいいよ」
「ありがと。そうさせてもらうわ」
「さんきゅ」
デイの申し出を素直に受け入れる2人。休息はとれる時にとっておかねばならないのだ。
そして先ほどの3人が出てくるのと入れ替えに、アリーナとマーニャは馬車へと引っ込んだ。

「は〜、もー寝るぞ寝るぞ〜っ」
マーニャはミネアの横に寝っ転がり、毛布にくるまるとあっという間に寝息を立て始める。
アリーナもマーニャを見習うべく、毛布を手に取り、空いている場所を探した。

「本当に朝食はよろしいのですか」
先ほどのデイとの会話を聞いていたクリフトが改めてアリーナに問いかける。
「ん、いいよ。実は、みんなが起きる少し前にね、ちょっと冷えるからってスープ作ったんだ。これ以上食べたら太っちゃう」
眠たい目をこすりながら、アリーナは冗談めかしてそう言って笑った。そのままクリフトの横を選ぶ。
「ごゆっくりお休みくださいませ」
「ありがとクリフト」
そして、お休みと一言言って目をつぶると、とたんに規則正しい寝息が聞こえてきた。


馬車の小窓から朝日が射して、アリーナの寝顔をきらきらと照らす。
馬車の中は先ほどまで皆の体温で温められていたためか、ほどよい温かさを保っている。
そして、たくさんの頼もしい仲間に守られているが故の安心感。

天使のような寝顔。


クリフトは気持ちよさそうなアリーナの表情を愛しそうに見つめる。
「お休みなさいませ」
よい夢を見られるようにと心から願いながら呟いて、毛布を軽くかけ直す。
もちろんアリーナの耳には届いていないだろうけれど。



少し離れたところから、ミネアは2人の一部始終を見守っていた。
その表情はとても穏やか。





ひとときの安らぎ。




*** あとがき ***

実は「secret」たちより書いたの先だったりします。
あまりに心情描写がないので、「secret」の後に持ってきました。

ただの日常の中に表れる想い。そういうのがいちばんあったかい。
常に死と隣りあわせならばなおのこと。
(書いた日:2004/2/12)


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