「アリーナ、大丈夫?」 「ん、平気…」 ここはガーデンブルグ南の洞窟。 盗賊バコタをぶちのめした帰り道、アリーナが麻痺を食らってしまった。 「ごめんねえ、私もマーニャも魔力切れちゃってリレミトできなくて。クリフト、やっぱ満月草なかった?」 「ええ、すみません。迂闊でした」 「仕方ないよ。いつもミネアが治してくれてたし。もうすぐ外だからそれまで我慢してね」 「ありがと…」 そこに、周りを見回っていたマーニャの声が響く。 「デイ!魔物!」 「っ!!…ハンババ1匹か、あれぐらいなら私たちだけでいける。クリフトはアリーナの護衛!」 デイはクリフトに指示を出してすぐに魔物の方へ駆け出していった。 マーニャもデイももう魔法は使えないが、あの程度の魔物ならどうにか撃退できるだろう。 あのハンババのほかに魔物の気配はない。しかし万が一に備えて視界と安全の両方が確保できる場所に移動することにする。 「姫様、失礼しますね」 「ん」 アリーナの腕を取り、そっと背負う。 長い巻き毛がクリフトの頬を伝わり落ちる。 不意に、ほんのりと甘い香りがふっと鼻をくすぐった。 (あ…姫様の香りだ――) 愛しい女性の香り。 抑えている恋心をいやが上にも刺激して余りある魅惑的な香り…。 何も考えるまい、悟られまい。 平静を装おうとする理性――― 「クリフト、いい匂い」 「!!」 「わ、私が?そんな、汗臭くて恥ずかしいですよ」 「ううん……石けんのいいにおい…」 ぼっ。 クリフトの体温が一気に上がる。 だめだ。 もう何も考えられない―――。 ・ ・ ・ 「…あの子、何やってんの?」 「さあ…?」 「ま、大体予想つくけどねー。ったくウブねえあの神官ボーヤはぁ。唇のひとつでも奪ってみろってね」 「あははは、絶対しないねクリフトは」 くーくー眠るアリーナを負ぶったまま真っ赤な顔でぼーっと夢見心地に立ち尽くすクリフトを。 とっくに戦闘終了したマーニャとデイが呆れ半分からかい半分の様子で遠目に観察しているなど、今のクリフトが知る由もなかった。
|
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||