暗い灰色の空の下。 街道伝いに歩く2人の男女。 1人は長く赤い巻き毛をはねさせて歩く少女。 1人は神官風の装いをした青年。 顔を襟巻きにうずめ白い息を吐きながら歩く姿が、外気の冷たさを容易に想像させる。 だが、当の本人たちは寒さに屈してはいないように見えた。 2人の表情がそれを物語っている。 どことなく初々しさを感じさせる雰囲気。 はにかんだような2人の笑顔が微笑ましい。 「あ」 赤毛の少女が嬉しさを含んだ驚きの声をあげ、足を止めて空を見上げた。 その声につられ、青年も一緒に見上げる。 雪。 ちらちらと鈍色の空から降りてくる白い結晶はまるで花びらのようで幻想的。 肌に触れると瞬く間にその存在が夢だったかのように消え失せる。 「…」 消え入った白い色を見た瞬間。 少女の胸に、言いようのない切なさが満ちた。 今までは雪を見るなり、まるで童謡に出てくる犬のようにはしゃいで駆け回っていたのに。 こんな気持ちになるなんて、どうして? 少女は気づいていない。 “消える”ことに敏感で。 “失う”ことに怯えている。 恋している証拠。 少女にはまだわからない。 けれど。 自然と、隣の青年を見つめていた。 ああ、寒いと思ったら、雪が降ってきましたね。 そんな言葉を紡ぎながら目を細める青年の横顔。 とってもきれいで。 空はとっても暗いのに、なぜかまぶしい。 と。 少女の視線に気づいた青年が顔を動かし、少女を見る。 まっすぐに、目と目が合った。 慌てて目を逸らす少女。 その頬はほんのり赤い。 そんな様子が愛らしくて。 青年は穏やか眼差しのまま微笑んだ。 青年の手がそっと少女に伸び、髪の毛の上に降り積もらんとする雪を優しく払う。 少女は払われる間じっと待っている。 それだけのことなのに、心地よさがお互いを包む。 行きましょうか、という青年の言葉に少女が笑顔でこくんと頷く。 雪がはらはら舞う街道を、2人は寄り添い歩んでいった。
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