08.明日は休みにしよう ...04/08/23 「デスピサロ様。進化の秘法の実験の途中経過についてですが…」 「エンドールとブランカを繋ぐ洞窟についての調査報告があがりましたゆえ…」 「デスピサロ様、エスターク帝王について…」 「デスピサロ様!…」 ここは魔物たちの地上での拠点ともいえる、デスパレス。 そこの玉座に納まったデスピサロは、次から次へともたらされる魔物たちからの報告を一つ一つ処理していた。 人間どもを滅ぼす計画。 それを阻止するといわれる伝説の勇者はまだ見つかってはいないが、それぞれの計画は順調に進んでいるようだ。 それゆえにこそ、魔族の王にて魔物たちの指揮官たるデスピサロも多忙の身であった。 「…サントハイムの人間どもが消滅した件についてですが、あれから無人のままです」 「そうか」 「もし使えそうならば、あの城を進化の秘法の実験所として使う案も出ております。それで、明日にでもデスピサロ様に直に視察していただきたく…」 「ふむ、いいだろう。すぐに準備にかかれ」 「ははっ」 カロンの報告に、厳しい相好を崩さず手際よく指示を出していた、その時。 風が、吹き込んだ。 気温にそれほど左右されない魔物たちが住まう城。窓が開いたままになっているのは珍しいことではない。 何ということはない事象。 無意識に、窓の外に目をやった。 さわさわと、木立の葉が鳴いていた。 耳を澄まさねば聞こえぬぐらいの小さな声。 まるで、あの愛しいエルフの娘のように…。 「…―――――――――。」 「…デスピサロ様?どうされました?」 「………いや、気にするな」 「は。それで、サントハイムの件ですが…」 「明日は、やめにする」 「…は?」 突飛に放たれた言葉。 「気分が乗らぬ」 「…は、はぁ…」 腑に落ちぬ表情のまま、下がるカロン。 デスピサロは、隣に控えていた大魔道に顔を向けた。 「もう休む。大魔道、後のことはお前がやれ」 「は…」 それだけを言い残してから、デスピサロは玉座を離れる。 そして、何事かと息を詰める魔物たちの間をすり抜けて部屋を後にした。 回廊の小さな窓から、空を見上げる。 …久しぶりに、行くか。 次の瞬間、銀色の風がその場を撫で、デスピサロの姿は掻き消えた。
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