27.頑張って ...05/02/16 「明日は大事な試験があるんです…」 「そうなんだー。大変だね」 「はい。もう緊張して緊張して…。もしこの試験に落ちたら、私、サントハイムにい続けられるのか…」 「え……そうなの?」 * * * 次の日。朝の光がクリフトの顔を照らした。 目を開けた瞬間、気持ちが沈んだ。連日の睡眠時間の少なさがそれを助長させる。 重たい気分を無理やり振り払うべく、ベッドから身を起こし、軽く2、3度首を振り… ぽこん。ころころん…… 何かが鈍い音を立てて床に落ちて、転がっていく。 …?何だろう? 当然、クリフトはそれを目で追う。 視線の先には、真っ赤なリンゴ。 …リンゴ? 何でこんなところに? 買った覚えももらった覚えもないのに。 いぶかしがりながら拾ってみると。 “ガンバッテ” 唐突に飛び込む応援のメッセージ。 リンゴの側面に、大きくのびのびと刻まれた文字。 大胆なその文字の主は誰なのか。 それは容易に想像できて。 肩の力が、ふっと抜けた。 「ありがとうございます…。頑張ります」 夜中まで勉強していて、眠っていたのはほんの数時間。 それまで待っていてくれたリンゴの持ち主。きっと今日は寝不足だろうな。 思いながら、そっと優しくリンゴをなでて、自分のベッドの枕元にちょこんと置いた。 そして自然にほころぶ表情とともに、クリフトは準備に取りかかるのだった。
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