26.エレベーター ...04/11/16



今日はアリーナの誕生日。
そのプレゼント代わりとなる計画を、アリーナ以外の女3人は密かに練っていた…。


* * *


「ここがエドガンさんの研究所のある洞窟ですか…」
「ここに魔法の鍵があるのね」

コーミズ村の西にぽっかりと空いた洞窟を前にして、クリフトとアリーナが呟いた。

洞窟の中には魔物たちが巣食っていた。
撃退しながら先へ進んでいく。

しばらくして、上に上るためのエレベーターが見えてきた。


そのとき、他の人間は気づかなかったが、マーニャとミネアがデイをちらりと振り返った。
デイが小さく頷く。


そう、それは作戦実行の合図――


「そりゃ!」

ぱこーんっ

「ぐえっ」
「クリフト!…って、マーニャ姉さま!?」
「やだごっめーん、手が滑って鉄の扇が当たっちゃった〜v」
「う…ま、マーニャ、さん、い、今、明らかにワザト…」
「今よ!ラリホー!」
「ラリホーマ!」

ぱた。

「ZZZZZZ…」
「ク、クリフト!?」
「ああっ、クリフトが敵の魔法で眠ってしまったわ!」
「きっとあそこにいるミステリドールの仕業ね!」
「っていうか、今の呪文の声…」
「メラミ!」

ばぼぅんっ

「…ふう、クリフトをこんな目に合わせた憎き敵は葬り去ったわ」
「あ、あのさ」
「ああっ、戦闘が終わったのにクリフトが目覚まさないわ!」
「まあ大変。ラリホーの重ねがけで深く眠りについてるようね」
「そ、それならデイのザメハで」
「いっけなーい!ザメハの魔法、ど忘れしちゃった!」
「あらまあ、それじゃ仕方ないわね。自然に起きるまで待つしかないわ」
「あ、じゃあ馬車に寝かせて」
「やだー、オジサマたち待ち疲れちゃったのかしら、馬車の中占領してぐっすり眠っちゃってるわよぉ」
「やけに静かだと思ったら、いつの間に…。あ、でもこの馬車10人乗りだし…」
「まあ!一体誰が集めたのかしら、馬車の中がほとんど鋼鉄の鎧で埋め尽くされてるわ!」
「そ、そんな、むちゃくちゃ…」
「でもこれじゃー、クリフトを馬車に乗せられないねえ」
「ちょ、デイ…」
「そーねそーね、全くもってそのとーり!」
「そんなあ、マーニャ姉さま…」
「そうね、そういうわけだから、アリーナ」

ぽんっ

「ここで、クリフトの見張りをしといてちょうだい」


端正な顔に浮かぶ、女神のような極上の笑み。
有無を言わさぬ口調。


「………えええええ!?ちょっ、ミネア姉さ…」
「さあ!そーと決まったらとっとと上に行きましょーか!」
「ちょっ、待っ…」
「あら、クリフトをひとりにしていくわけにはいかないでしょ?」
「そ、それはそうなんだけど…」
「大丈夫、早く帰ってくるように、一応、努力するわ」
「こ、こんなとこで」
「あ、トヘロスたくさんかけといたから」
「そ、そうじゃなくって、あの何かすごくだまされ」
「あっ、一応聖水も大量に振りかけておくから!」
「あ、ありがと……でもなくて!お、追いかけるから!」
「そうそうアリーナ、ここ、エレベーター以外に上に上がる方法ないからねv」
「うそ!?ちょ、ちょっと…」
「じゃ!よろしく〜!!」







ごぅ…ん







「……………。
 ほ、ほんとに行っちゃった………」








無情にも、エレベーターはアリーナたちを置いて上へと上がっていく。
ボー然と、それを見送るしかないアリーナだった。


* * *


とりあえず、クリフトのすぐ横に座り込む。
どういう仕組みだか知らないが、本来洞窟内では効かないはずのトヘロスと聖水が効いているらしく、魔物は全然寄ってこない。
一応マーニャに殴られたクリフトが無事かどうか診てみたが、初めから神官帽のいちばん厚い部分を狙ったようで、全くの無傷。
クリフトはまだ目を覚まさない。むしろ気持ちよく熟睡しているように見える。
無防備に眠り続けるクリフトの顔はいつもと見てるものと違って、何となく気恥ずかしい。


「…ワザトだよね、絶対。まったくもー…」


意識的にクリフトから目を離し、そう呟く。




静かな空間。
クリフトの寝息以外聞こえない。






…………………………………………………………




まあ、いっか。





してやられた事実に元来の負けず嫌いの性格が疼くが、とりあえずそれは無視することにした。
そして、少しためらいつつも手を伸ばし…、そっとクリフトの頭を自分のひざに乗せてあげたのだった。






可哀想なクリフト第?弾。とりあえず合掌。
ちなみにオジサマーズは洞窟入ってすぐ辺りに、ミネアのラリホーをかけられてます。起きないように何度も何度もかけられてます。こっちにも合掌。
ついでに冤罪を被ったミステリドールにも合掌。てゆーかラリホー使わないしなミステリドール。
ちなみにクリフトは馬車組が帰ってくる前に目を覚まして、いつも通り慌てふためくオチが用意されております。(そうだろーよ)
(04/11/16 UP)


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