25.契約期間 ...04/11/01 「う…ん…」 月明かりの差し込むサントハイムの自室のベッドで寝返りを打ったときだった。 足音が聞こえた気がした。 はっと目を開けて起き上がろうとするのと、首筋に冷たいものが当てられたのは同時だった。 「…!」 「静かにして」 かけられた重い声はあまりにも聞きなれた声。 「…姫様…?何を…」 「声を出さないで。お願いがあるの。聞いてくれるなら、そしてこのことを誰にも言わないと約束するならナイフを下ろすわ」 「………。…わかりました。約束しましょう」 その言葉で、首の冷たさは消えた。 改めて起き上がり、アリーナを見た。 アリーナはベッド脇の床にひざを立て、クリフトと視線の高さを合わせた。 「それで、話とは?」 「お仕事で少しサントハイムを離れるって、昼に言ってたよね」 「ええ。……まさか、同行をご希望される気ですか!?」 「ううん。それはさすがに無理」 「それでは一体…」 「世界樹に寄ってほしいの」 「は?」 「世界中のいちばん上、天空の剣のあった宝箱の中にちょっとした忘れ物をしてきちゃったから、それを取ってきてくれない?」 「えええええ?な、なんでそんなところに、っていうか、そんな明確な忘れ物って、忘れ物って言いませんよ普通」 「うるさいなあ。とにかく取ってきてほしいの!」 「だだだだだって、た、高いじゃないですかっ!しかもいちばん上なんて…そんな、お、恐ろしい…」 「だ、か、ら、絶対言うこと聞くような状況作ったんじゃない」 「…」 「でも、タダで、とは言わない」 「…なるほど、交換条件ですか」 「そう。それならクリフトも頼み聞きやすいでしょ?」 「準備がよろしいですね」 「ふふ。でしょ」 「では、条件をお聞きしましょう」 「それはね」 突然、今まで見ていたアリーナの顔にピントが合わなくなった。 そして、頭が何事かを分析するより先に、唇が、温か――― 「っ!!!」 瞬間、ばっと身を引いた。 思わず口を押さえる。 「…これが、あたしの方の条件。もう支払済みだけど、条件になる?」 「じゅ、じゅ、じゅじゅじゅ十分です…っ!!」 「契約成立ね」 はにかみながらも、にっと笑うアリーナに、クリフトは頭を抱えながらため息ひとつ、「かないませんね…」と呟いた。 「ところで、ナイフを使う必要はなかった気がするんですけど…」 「えー?ちょっとあーいうのやってみたかったからーv」 「…」 * * * そして1ヵ月後、世界樹にへっぴり腰で上るクリフトがいた。 それでも、やっとの思いで見つけた宝箱の底にあったものは、クリフトの生涯の宝物になったという…。
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