21.これ、誰のですか? ...04/10/02 「ねーねー、これ誰の?」 こんっこんっ、と軽快なノックとともに、クリフトの返事を待たずドアを開けたマーニャの第一声。 「正直迷惑」とあからさまに書かれている表情で応対しかけたクリフトの動きが、マーニャの手の中にあるものを見た瞬間、ぴたりと止まった。 アリーナのブロマイド。 もちろん、クリフトが隠し持ってたもの。 「なっ…なななななななな、なん、なんっ…???」 「あ、やっぱりアンタの?こんなの持ち歩くのって、アタシらの中じゃあアンタだけだもんねえ。あははっv」 お。お茶あんじゃん。もらうよ〜、と勝手に部屋に入り勝手にティーポットの紅茶をティーカップに注ぎながら、 「感謝しなさいよ。廊下に落ちてたのをアンタに直行でもってきてやったんだからね」 そう言って、マーニャはにやりと笑った。 廊下…? そういえばさっき、廊下で手帳を開いた。その時落ちたのか。 「………ありがとうございます」 とりあえず礼は言っておくことにする。 ちゃっかりとお茶を飲むマーニャを横目に、複雑な気分のままため息つきつつ、返してもらったブロマイドを戻すためぱらぱら手帳をめくった。 「あ。そーそー、そーいえばさあ」 「…何ですか?」 「女のコの間のウワサなんだけどさあ」 「はい?」 「手帳に好きなコの写真とか挟むと、恋って実らないらしーんだよねえ」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「……え」 「あ、お茶ごっそさ〜んv カップここに置いとくわね〜」 「ちょっ、あっ…」 「じゃ〜ね〜v」 ぱたん。 ………………………。 …ひょっとして、からかわれた…? マーニャに閉められたドアをしばらく呆然と見ていたが、はっと我に返り、クリフトはひとり顔を赤めた。 手にしていた手帳に慌ててブロマイドを挟もうとして………、ぴたりと手を止め―――、手帳をぱたんと閉じ、趣味で読んでいる本を代わりに取り出してブロマイドを挟みなおすクリフトだった。
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